金融庁が証券取引システムへの攻撃を受け調査開始
金融庁は10月21日、岩井コスモ証券の外部委託先がサイバー攻撃を受けた問題を巡り、他の証券会社への影響を調べ始めた。
今回の事案では、証券会社が利用するインターネット取引システムに外部から侵入があり、顧客が希望していない売買注文が実際に成立した。金融庁は同種の問題が別の金融機関でも起きていないか確認するため、関係する証券会社への聞き取りを行ったとされる。
調査対象が広がった背景には、被害を受けたシステムの運用会社が複数の金融機関にサービスを提供していることがある。1社で確認された侵入事案について、共通のシステムを利用する他社への影響も調べる対応となった。
複数の金融機関が利用する委託システムを点検
攻撃を受けたのは、東京都に拠点を置くトレードワークスが運用・保守を担当するシステムだった。同社は岩井コスモ証券のオンライン取引環境を支える業務を受託している。
今回の問題を受け、トレードワークスは他の金融機関向けに提供しているシステムについても安全性を確認した。その結果、同じような不正アクセスの発生は認められなかったとしている。
一方、岩井コスモ証券で発生した問題については、侵入につながった原因を突き止め、必要な修正作業を終えた。現在はシステムが安定して動作しており、インターネット経由の証券取引も通常通り利用できる状態となっている。
金融庁による実態確認と、システム提供会社による点検がそれぞれ進められた形だ。
AI利用の可能性も浮上したサイバー攻撃の実態
今回の侵入行為では、攻撃にAIが使用された可能性があると指摘されている。ただし、AIの関与は確定しておらず、具体的な使用方法についても明らかにされていない。
実際に確認された被害は、顧客の証券口座を対象とした不正な売買注文である。10月14日、岩井コスモ証券の顧客7口座で本人の意思とは異なる注文が発生し、5口座で売買が成立した。
この事案は、取引を管理するシステムへの攻撃によって発生した。顧客から通常の注文が出されたわけではなく、外部からの侵入が証券売買に影響した。
岩井コスモ証券は当日中に該当顧客へ事情を伝え、成立した取引を元の状態に戻した。そのため、不正注文による顧客側の金銭的な損失は発生していない。
顧客4975人の情報漏えいと不正取引の関係
今回の攻撃では、取引への影響だけでなく、顧客の個人情報が外部に流出する事態も起きた。
岩井コスモ証券が16日に発表した時点では、情報漏えいの対象は4611人だった。しかし、その後の調査で364人が追加され、最終的に公表された人数は4975人となった。
漏えいした情報には氏名やメールアドレスなどが含まれるが、取引暗証番号は流出していない。同社は、これらの情報を使って証券口座にログインしたり、売買注文を出したりすることはできないと説明している。
また、不正な売買と情報漏えいはいずれも14日に確認されたものの、流出した個人情報を利用して取引が行われたわけではないとしている。
不正取引については16日の時点では対策が完了しておらず、安全確保を優先した後、20日に詳細を公表した。
金融機関への影響確認とセキュリティ管理の強化
岩井コスモ証券とトレードワークスは、今回の事案を受けてシステム監視と安全性の点検を継続する。侵入原因への対応は終了しているが、両社は管理体制の強化と再発防止に取り組む方針を示している。
金融庁も、同じシステム提供会社と関係する証券会社の状況を確認している。トレードワークスの点検では他社への同種の攻撃は見つかっていないものの、金融庁による実態把握が進められている。
今回の問題では、顧客の個人情報が流出しただけでなく、実際の金融取引にも影響が及んだ。対象となった5口座では取引状態の復元が完了し、利用者の負担も生じていない。
システムの通常運用が再開された後も、証券会社と委託先による安全管理の見直しが続けられる。