銀行ブランド刷新で経済圏拡大の狙い鮮明に
NTTドコモ・フィナンシャルグループは、住信SBIネット銀行の消費者向け銀行サービスを8月3日から「ドコモの銀行」に刷新する。名称にドコモを前面に出すことで、通信、決済、証券、銀行を結びつけた経済圏を広げる狙いが鮮明になった。
同グループは7月1日に発足し、9日に東京都内で事業戦略を発表した。ドコモはすでにマネックス証券を子会社化しており、銀行事業と証券事業を合わせて金融サービスの厚みを増している。
銀行ブランドの刷新に合わせ、利用者にdポイントを還元する取り組みも順次進める。携帯電話の利用者に加え、決済や資産形成の利用者を取り込むことで、ドコモ経済圏の利用頻度を高める構えである。
ドコモショップで金融接点を全国規模に拡大へ
ドコモは、銀行サービスの利用拠点として全国のドコモショップを活用する。口座開設や預金関連の手続きについて、店舗スタッフが利用者を支援する体制を整える。
この取り組みは、デジタル専業の銀行サービスに対面の要素を加える点に特徴がある。オンラインでの手続きに不慣れな利用者にとって、身近な店舗で説明を受けられることは利用の後押しとなる。
2030年度までには有人店舗を1500店に増やし、そのうち150店では住宅ローンも扱う計画である。今年度中にも1000店を開く見通しで、銀行サービスを全国規模で利用者に届ける体制づくりを急ぐ。
若年層獲得が中長期の成長課題として浮上
ドコモ・フィナンシャルグループの廣井孝史社長は、銀行の預金残高や証券の預かり資産などについて、競合各社と比べても高い水準にあるとの認識を示した。資産形成能力のある顧客との接点を持つことを強みとしている。
一方で、ドコモの回線契約者は中高年層に偏りがあるとされる。金融事業を今後さらに伸ばすには、若年層の利用を広げることが重要な課題となる。
住信SBIネット銀行を子会社化した背景にも、利便性を重視する若い利用者層への接点拡大がある。もっとも、ドコモ色が強まることに対して、若年層から利便性低下を懸念する声もあり、ブランド刷新後の使い勝手が注目される。
通信不振の立て直しにも金融戦略が波及
ドコモが金融事業を強化する背景には、通信事業の伸び悩みがある。通信品質悪化の影響が長引き、シェア低下が続いているとされ、既存事業だけに頼らない収益源の確保が必要になっている。
金融サービスは、通信契約とは異なり、日常的な支払い、貯蓄、投資、ローンなど幅広い場面で利用者と接点を持てる。携帯電話の契約者を金融サービスに誘導し、金融利用者を通信サービスに結びつけることで、相互に利用を広げる狙いがある。
KDDI、ソフトバンク、楽天グループもすでに銀行を保有しており、通信と金融の組み合わせは携帯大手の主要な競争領域になっている。ドコモは最後発として、既存の店舗網やポイント基盤をどう生かすかが問われる。
利便性維持と信頼確保が今後の焦点に
ドコモの銀行戦略では、AIを活用した金融提案も重要な柱となる。通信事業で得たデータをもとに、顧客の関心や生活情報を学習し、人生設計に合わせた金融商品を提案するサービスが想定されている。
ただし、金融サービスでは利便性だけでなく、信頼性と安心感が欠かせない。銀行ブランドを刷新しても、既存利用者が使い勝手の変化に不安を抱けば、顧客基盤の拡大に影響する可能性がある。
ドコモは店舗での対面支援、AIによるデジタル提案、dポイントを軸にした還元策を組み合わせ、金融事業の本格化を進める。若年層の開拓と既存利用者の信頼維持を両立できるかが、通信事業の再建を含めた今後の成長を左右する。