海外投資収益が経常黒字を下支えする構図に
5月の経常収支は3兆9683億円の黒字となり、16カ月連続でプラスを維持した。前年同月比では19.5%増となり、海外との取引全体では大幅な黒字が続いた。黒字の中心にあるのは、海外投資から得る利子や配当などの第1次所得収支である。
第1次所得収支は4兆2756億円の黒字となり、前年同月から2.3%増加した。貿易やサービスの収支が小幅な赤字にとどまる中、投資収益が経常黒字を大きく押し上げた。日本企業などが海外で得る収益が、国際収支上の黒字を支える構造が改めて示された。
貿易黒字転換が全体の黒字拡大を補強する
貿易収支は69億円の黒字だった。前年同月から5040億円改善し、全体の黒字拡大を補った。輸出額は9兆3602億円で、前年同月比14.7%増となり、輸入額の9兆3533億円を上回った。
輸出の増加には、米国向け自動車やアジア向け電子部品が寄与した。半導体関連の部品や非鉄金属の輸出も伸びた。輸入は8.1%増加したが、輸出の伸びがより大きかったため、貿易収支は黒字に転じた。
旅行収支縮小でサービス分野は赤字に悪化
サービス収支は103億円の赤字となった。前年同月より1411億円悪化し、黒字から赤字へ移った。背景には、旅行収支の黒字幅が縮小したことがある。
旅行収支はインバウンド消費の動向に左右されやすい。5月は訪日外国人旅行者の減少が響き、サービス分野全体の収支を押し下げた。モノの取引である貿易収支が改善した一方、サービス取引では弱さが表れた。
訪日客減少と出国者増が収支に影響拡大へ
訪日外国人旅行者数は355万9900人で、前年同月比3.6%減だった。中国からの来訪者が減ったことが、全体の減少につながった。訪日客数の減少は、旅行収支の黒字幅縮小に直結した。
一方、出国した日本人は112万7400人となり、前年同月比4.7%増加した。訪日客の減少と日本人出国者の増加が重なり、旅行関連の収支には下押し圧力が生じた。サービス収支の赤字転落は、こうした人の移動の変化を反映している。
海外収益の活用先が今後の焦点となる
5月の国際収支は、経常黒字が続く一方で、その中身には明確な偏りがある。第1次所得収支の黒字が大きく、貿易収支は小幅黒字、サービス収支は赤字という構成だった。黒字の持続は確認されたが、国内経済への波及は別の課題として残る。
みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは、経常黒字の多くが米国など海外への再投資に使われるとの見方を示している。企業にとっては、得たドルを日本国内ではなく、雇用や設備投資の誘因がある国で使うことが合理的だとの指摘である。経常黒字の大きさだけでなく、その資金が国内の成長につながるかが重要な論点となる。