航空運賃上昇への警戒が訪日市場で強まる
5月の訪日客数は355万9900人となり、前年同月比3.6%減少した。減少は2カ月連続で、中国からの訪日客減少が全体に影響した。足元では中東情勢の混乱による直接的な影響は限定的だったが、今後は燃料費の上昇が訪日需要の重荷となる可能性がある。
観光庁の村田茂樹長官は6月17日の記者会見で、今後の訪日需要にどの程度影響が出るかを注視する考えを示した。航空運賃は海外旅行の判断に直結する要素であり、夏休みシーズンを前に費用面の変化が注目されている。5月の統計は、訪日市場の底堅さと先行きのリスクを同時に示した。
5月客数減少に表れた中国要因の重さ
中国からの訪日客は前年同月比60.4%減となった。人数は31万3000人で、前年同月割れは6カ月連続となった。日中関係の悪化に伴う渡航自粛要請の影響が続き、5月全体の減少につながった。
一方で、他の地域は堅調だった。韓国は95万1300人で15.2%増、台湾は61万6800人で14.6%増となり、いずれも5月として過去最高を記録した。統計対象の23カ国・地域のうち19カ国・地域で5月の過去最高を更新しており、中国以外の訪日需要は強さを保った。
燃油サーチャージ上昇が旅行負担増につながる
今後の懸念材料は、燃油特別付加運賃の上昇である。全日本空輸と日本航空は、7、8月発券分の国際線燃油サーチャージを北米・欧州行きで9000円引き上げた。これにより、両社の北米・欧州行きは片道6万5000円となった。
この水準は4月分から2倍以上に上昇した。中東情勢の悪化に伴うジェット燃料高が背景にあり、航空会社は燃料費の増加を運賃に反映する動きを進めている。航空運賃の上昇は、訪日を検討する旅行者にとって負担増となる。
LCC減便や運休に広がる燃料高の影響
燃料費の高騰は、大手航空会社だけでなく格安航空会社にも影響している。LCCの中には、燃料費の上昇を吸収しきれず、減便や運休を決めるケースも出始めた。運航本数が減れば、旅行者の選択肢や価格面にも影響が及ぶ。
訪日需要は、航空便の供給量と運賃水準に左右される。特に夏休みシーズンは移動需要が高まる時期であり、航空コストの上昇が旅行計画に影響する可能性がある。5月時点で中東情勢の影響は限定的だったが、燃料費を通じた影響は今後の焦点となる。
夏の訪日需要は燃料費動向が焦点となる
明るい材料としては、米国とイランの戦闘終結に向けた協議を受け、原油相場に下落の動きが出たことがある。中東産原油の供給回復への見方から、米国産標準油種WTIは6月16日に終値として約3カ月ぶりの安値をつけた。ただし、両国の協議にはなお隔たりがあり、先行きは見通せない。
5月の訪日市場は、中国からの減少を他地域の好調が補う形となった。今後は、燃油サーチャージの上昇が夏の訪日需要にどこまで影響するかが注目点となる。訪日客数の回復基調を維持するには、航空運賃と燃料費の動向が重要な要素となる。