欧州の住宅価格上昇が各地の抗議活動の背景に浮上
欧州各地で相次ぐ抗議活動では、住宅価格や家賃の上昇が主要な争点の一つとなっている。フランスで学生らが始めた教育環境の改善を求める運動は、生活費全般への不満を取り込む形で拡大し、複数の国で大規模なデモが行われている。
ポルトガルでは住宅購入の難しさが問題となり、アルバニアでは所得水準に対する家賃の高さや観光開発計画が抗議の対象となっている。食料品などの価格上昇も家計を圧迫しており、学生だけでなく幅広い世代が参加している。
フランスでは10月17日の抗議活動に約55万人が参加した。各国で掲げられる要求は異なるものの、生活費の負担軽減を求める声が共通している。
ポルトガルでは住宅価格が2017年から約2倍に上昇
ポルトガルの首都リスボンでは17日、住宅価格や日常生活に必要な費用の増加に抗議する数万人規模のデモが行われた。参加者は市内中心部を行進し、住宅問題への対応を求めた。
同国の住宅価格は2017年から約2倍に上昇している。住宅取得の困難さは欧州でも特に深刻な水準にあり、住居費の負担が抗議活動の中心的な問題となっている。
住宅を購入する際の負担だけでなく、日々の生活に必要な支出も抗議の対象となっている。フランスで始まった教育環境をめぐる運動とは異なる問題を抱えながらも、経済的な負担の増加に反発する動きが広がっている。
アルバニアでは月収と家賃の格差が大きな問題に
東欧のアルバニアでは、住宅費の高さが住民の生活に重くのしかかっている。同国の平均月収は約17万9,000円だが、首都ティラナの平均家賃は約12万8,000円に達する。
単純に比較すると、平均家賃は平均月収の約71.5%に相当する。こうした所得と住居費の差に加え、教育費の負担も抗議活動の要因となっている。
13日から学生らが教育費の見直しを要求するデモを始め、その後は政府の観光開発政策に反対する人々も参加した。17日と18日にはティラナに数千人が集まり、エディ・ラマ首相の辞任などを要求した。
教育政策や家計負担に加え、政府が進める開発事業も争点となり、抗議活動は複数の要求を掲げる運動へと拡大している。
トランプ大統領の親族が関わる観光開発計画にも反発
アルバニアで問題視されている開発計画には、トランプ米大統領の長女イバンカ氏の夫、ジャレッド・クシュナー氏が関係している。
クシュナー氏が関与する投資会社は、自然保護区に近い沿岸地域で高級ホテルや別荘などを建設する事業を計画している。この開発をめぐっては、現地の不動産関係者から家賃相場を押し上げる要因になっているとの指摘が出ている。
ただし、開発計画と家賃上昇の直接的な因果関係が確定したわけではない。抗議活動では政府のリゾート開発方針そのものへの反対も示されており、住宅費の問題と開発政策をめぐる対立が重なっている。
アルバニアでは、教育費の見直しを求める学生の運動に、こうした開発への反対を訴える人々が加わったことで、政府に対する抗議の規模が拡大した。
生活費への不満が各国政治に及ぼす影響と政府の対応
フランスでは、生活費の上昇に対する不満が若者以外にも広がっている。抗議参加者からは、最低限の食料品を購入するだけでも100ユーロ、約1万8,000円が必要になるとの訴えが出ている。
一方、抗議活動の一部は暴力を伴う事態となった。フランスでは市庁舎への放火や店舗での略奪が発生し、約2,400人が逮捕・拘束された。イタリアのミラノでも約270人が一時拘束され、ベルギーでは約3万人が参加したデモの一部で警察との衝突が起きた。
フランスのマクロン大統領は破壊行為を非難し、ルコルニュ首相は19日、一部地域での夜間外出禁止措置を地方当局に要請した。
鶴岡路人教授は、欧州各国が経済対策を実施する際には、それぞれ異なる制約があると指摘している。フランスでは翌年の大統領選挙も控えており、生活費の上昇への対策と抗議活動への対応が政治上の重要な課題となっている