欧州各国で原発を見直す動きが相次いで拡大
ヨーロッパで、原子力発電を再び重視する動きが広がっている。ウクライナ侵攻などで国際情勢が不安定となるなか、エネルギーの安定供給と価格上昇への対応が各国共通の課題となった。電力需要が増える一方で、脱炭素政策も進める必要があり、再生可能エネルギーとともに原発を活用する考えが強まっている。
フランスやイギリスでは新たな原発の建設計画が進んでいる。ベルギーは原発を段階的に廃止する方針だったが、2025年に新設を認める方向へ転換した。スウェーデンは2022年に新設禁止の方針を取り下げ、スイス政府も2025年に禁止撤廃の方針を示した。
イタリアも約40年ぶりに原発新設へ政策転換
こうした流れの中で、イタリアも長年続けてきた脱原発政策を見直す。上院は9月23日、新たな原発建設に向けた制度を政府が整備できるようにする法案を最終的に可決した。政府は今後、原子力発電を再び導入するための具体的な法制度づくりに入る。
イタリアでは1986年のチョルノービリ原発事故後に反対論が強まり、1990年までにすべての原発が運転を停止した。それ以降は約40年にわたって原発を使わない政策を続け、エネルギーを輸入に頼る状態が続いた。今回の法成立により、その長期方針が転換される。
ウクライナ侵攻後のエネルギー価格高騰が各国を直撃
欧州各国が政策を見直す背景には、近年の電気代やガス代の上昇がある。2022年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、多くの国はロシア産天然ガスの輸入を大幅に減らした。安価なガスへの依存を下げる一方、エネルギー価格は家計や企業の大きな負担となった。
イタリアでは電気料金が欧州内でも高い水準となり、メローニ政権は2023年から原発再導入に向けた調整を進めてきた。ドイツでも2023年にすべての原発が停止したが、今年1月にはメルツ首相がその判断を「重大な失敗だった」と述べた。原発停止がエネルギー価格や産業競争力に影響したとの指摘も出ている。
再エネと原発を組み合わせる議論が広がる背景
欧州連合や各国は脱炭素化を進めており、石炭など別の火力発電への依存を簡単に高めにくい状況にある。一方で、電気自動車やデータセンターの普及によって電力需要は拡大している。こうした条件が重なる中、再生可能エネルギーだけでなく原子力も電源構成に組み込む考えが支持を広げている。
イタリアでは、小型モジュール炉と呼ばれるSMRなどの次世代型原子炉を導入する方針だ。従来の大型原発より費用を抑えられることが想定され、量産体制が整えば2034〜35年ごろの稼働が可能とされる。政府は今後12か月以内に、規制機関や安全基準に関する法令を整える。
エネルギー政策の再構築が欧州各国で本格的に進展
欧州では、原発を維持・拡大する国だけでなく、かつて縮小や廃止を選んだ国でも方針転換が相次いでいる。背景には、エネルギー安全保障、電気・ガス料金、脱炭素化、そして増え続ける電力需要という複数の課題がある。各国はそれぞれの事情に応じて原子力の位置づけを改めている。
イタリアの法案成立は、その動きを示す政策変更の一つとなる。約40年間原発を使わなかった国が、SMRを軸に新設へ向かう制度整備を開始した。今年6月の世論調査では57%が再導入に賛成しており、政府は新たな原子力政策を具体化する段階に入った。