最上位モデルの提供時期は示されず
米グーグルは7月21日、「ジェミニ」の新モデル3種類を公表したものの、市場が注目する最上位版「ジェミニ3.5プロ」の正式な投入日を明らかにしなかった。同社は現在、提携企業による試験を進めており、提供開始は近いとの説明にとどめた。発表の中心は、価格と処理効率を重視したモデルだった。
スンダー・ピチャイ最高経営責任者は5月の開発者会議で、ジェミニ3.5プロを6月に投入する方針を示していた。しかし、実際の提供は当初の計画より数週間遅れている。
プログラミング性能が開発課題に
関係者によると、遅れの背景にはプログラミング支援機能が社内目標に達していないことがある。コード作成などの機能は企業からの需要が特に大きく、生成AIの実用性を評価するうえで重要な分野となっている。グーグルは製品化に向け、性能の調整を続けている。
ジェミニ3.5プロの完成度は、グーグル傘下のAI研究部門ディープマインドの開発力を示す材料にもなる。競合企業が高性能モデルを相次いで展開するなか、上位版の提供時期と能力が市場の評価を左右する状況となっている。
軽量モデルを先に市場へ投入
最上位版に先行して発表されたのは、一般業務向けのフラッシュ系モデル、処理速度と低価格を重視する「ジェミニ3.5フラッシュ・ライト」、サイバー分野向けの「ジェミニ3.5フラッシュ・サイバー」だ。いずれも、最高水準の性能を必要としない作業を効率的に処理することを目的としている。
一般用途のモデルは文章作成やソフトウエア開発などに対応する。フラッシュ・ライトは大量の処理を短時間で進める用途を想定し、企業がAIを継続利用する際の費用負担を抑える。グーグルは上位版の完成を待つ一方、実務向けモデルの提供を先行させた。
サイバー防御向けAIの開発競争が激化
フラッシュ・サイバーは、ソフトウエアの脆弱性を探し出し、修復作業を支援する専門モデルである。導入初期は政府機関や提携企業に対象を絞り、限定的に提供する。グーグルは安全保障や企業システムの保護に関わる領域で利用実績を積み上げる。
この分野では米アンソロピックがサイバー防御向けAIを先行して展開している。生成AI市場では中国企業の存在感も高まっており、グーグルは複数の競争相手に直面する。新モデルの投入には、開発の遅れを指摘される状況から巻き返しを図る意味合いもある。
決算説明会で開発状況に関心
グーグルの親会社アルファベットが7月22日に開く2026年4~6月期の決算説明会では、ジェミニ3.5プロの提供時期や開発の進み具合が主要な論点となる。投資家や業界関係者は、ディープマインドがオープンAIやアンソロピックとの競争で優位性を保てるかを注視している。
グーグルは同時に、次世代モデル「ジェミニ4」の学習開始も公表した。軽量版の普及、最上位版の完成、次世代モデルの開発を並行して進める戦略となる。ジェミニ3.5プロの投入時期は、同社の生成AI事業の競争力を判断する重要な指標となる。