非営利理念を巡る対立が表面化
米実業家イーロン・マスク氏がオープンAIの営利化を巡って起こした訴訟で、米カリフォルニア州オークランドの連邦地裁は5月18日、請求を退けた。裁判所は、訴えを起こすことができる期間を過ぎていたとして、時効の成立を認めた。マスク氏は判断を受け入れず、控訴を検討している。
この訴訟では、オープンAIが非営利組織として始まったにもかかわらず、後に営利化を進めたことの妥当性が問題となった。マスク氏は、同社の現在の方向性が設立当初の目的と異なると主張した。これに対し、オープンAI側は、設立時の寄付に関して将来の非営利維持を約束していなかったと説明していた。
2015年設立時の関係が焦点
オープンAIは2015年、マスク氏や現CEOのサム・アルトマン氏らによって設立された。当初は非営利組織として出発し、人工知能の研究開発を進める体制を取っていた。報道によれば、マスク氏は同社に3800万ドルを投資した。
その後、マスク氏は会社の方向性を巡ってアルトマン氏らと対立した。2018年にはオープンAIを離れ、同社の運営から距離を置くことになった。オープンAIはその後、2019年に営利子会社を設立し、事業拡大に必要な資金を外部から受け入れる仕組みを整えた。
ChatGPT公開後に注目が拡大
オープンAIは2022年、対話型AI「ChatGPT」を一般公開した。これにより、同社は生成AI分野の主要企業として広く知られるようになった。企業や個人によるAI利用が急速に広がる中、同社の資金調達や運営体制にも注目が集まった。
マスク氏は2024年、同社が営利的な事業運営を強めたとして訴訟を起こした。訴えでは、アルトマン氏の取締役会からの追放などを求めた。さらに、同社がマイクロソフトから出資を受けたことも、当初の理念から外れた動きとして問題視した。
時効認定で請求は退けられる
連邦地裁は今回、マスク氏の主張の中心部分について実質判断を示す前に、訴えが期限を過ぎていると判断した。これにより、マスク氏が求めた役員交代や損害賠償の請求は退けられた。裁判所の決定は、オープンAIの営利化が適切だったかを直接判断したものではない。
一方、オープンAI側は、マスク氏の訴訟について、同氏が設立したAI企業xAIを優位に立たせる狙いがあると反論していた。AI開発を巡る競争が激しくなる中、今回の訴訟は創業者間の対立だけでなく、生成AI市場における企業間競争の側面も持っていた。
上級審での争いに移る可能性
マスク氏は判決後、XでオープンAIとアルトマン氏らを批判し、控訴する考えを示した。地裁で請求は退けられたが、上級審で争いが続く可能性がある。控訴が行われれば、設立時の資金提供の意味や、営利化に関する合意の有無が改めて問われることになる。
今回の判断は、急成長したAI企業の組織形態や資金調達のあり方に関心が集まる中で示された。オープンAIはChatGPTの公開以降、世界の生成AI市場で存在感を高めてきた。マスク氏との法的対立は、同社の成長過程と創業時の理念を巡る問題として、今後も注視される。