新聞記事利用を巡る訴訟が本格化
生成AIを使った検索サービスが新聞記事をどのように扱うべきかを問う裁判が始まった。朝日新聞社と日本経済新聞社は、米国のAI事業者パープレキシティに対し、記事の無断利用を理由に差し止めや削除、損害賠償を求めている。東京地裁では5月14日、第1回口頭弁論が開かれた。
両社の請求額は、それぞれ22億円で、合計44億円となる。新聞社側は、パープレキシティが記事を無断で複製・保存し、利用者向けの回答に使ったと主張している。被告側はこれに対し、請求を認めず、訴えを退けるよう求めた。
AI回答が元サイト閲覧に及ぼす影響
パープレキシティのサービスは、利用者の質問に対し、インターネット上の情報を集めて要約し、回答を表示する。従来の検索エンジンが関連ページへのリンクを示すのに対し、生成AI検索では回答そのものが画面に示される。新聞社側は、この仕組みによって情報元である記事ページへの訪問が減るとみている。
報道機関は、取材や編集を通じて記事を制作し、ウェブサイトで配信している。AI検索がその内容を利用して直接回答を出せば、読者が元記事を読む機会は少なくなる。新聞社側は、こうした状況が続けば、報道コンテンツを作るための費用に見合った収入が得にくくなると問題提起している。
2024年からの収集行為を問題視
訴状によると、パープレキシティは遅くとも2024年6月ごろから、新聞社のサーバーなどにある記事を自動的に集めていたとされる。クローラーと呼ばれるロボットを使って記事データを取得し、複製した内容を自社サーバーに保存したというのが新聞社側の主張である。さらに、その情報を基に要約された回答を利用者に繰り返し表示したと訴えている。
朝日新聞社と日本経済新聞社は、こうした行為が著作権法上の複製や翻案、公衆送信に当たると主張している。両社は、無断使用を防ぐための対応を取っていたにもかかわらず、パープレキシティがそれを尊重しなかったとも指摘している。記事の取得から回答表示までの一連の処理が、今回の裁判の中心的な争点となる。
誤った引用表示への懸念も提起
今回の裁判では、AI回答の正確性も重要な論点として示された。新聞社側は、パープレキシティが回答の引用元として朝日新聞社や日本経済新聞社を示しながら、記事の内容とは異なる表示を多数行ったと主張している。利用者がその回答を新聞社の記事に基づく情報として受け止めれば、報道機関の信用に影響を与えるという立場である。
両社は、新聞社には正確な情報発信が求められるとし、誤った内容が社名とともに表示されることを問題視している。著作権侵害の主張に加え、不正競争防止法違反も訴えの中に含めた。AIが情報を要約する過程で、出典表示と内容の整合性をどのように確保するかが問われている。
報道各社とAI企業の対立が拡大
パープレキシティを相手取った訴訟は、日本と米国の双方で広がっている。日本では、読売新聞社の東京、大阪、西部の3本社も同様の訴訟を東京地裁に提起した。米国では、ウォールストリート・ジャーナルの発行元などが著作権侵害を訴え、さらにニューヨーク・タイムズも提訴している。
パープレキシティ側は、同社のAIサービスが日本の検索、情報分析、技術処理、引用に関する枠組みの下で適切に運用されているとの立場を示している。また、日本の裁判所に国際裁判管轄があることの証明がないとして、訴えは不適法だとも主張した。AI検索と報道記事の利用を巡る法的判断は、今後のデジタル情報流通の在り方に関わる争点となっている。