米AI企業が日本との連携強化に向けた方針を表明
米AI企業アンソロピックは、日本の政府機関や民間企業との協力を拡大し、人工知能を利用したサイバー防衛技術の強化に取り組む方針を示した。同社共同創業者のジャック・クラーク氏が10月14日、東京で開催した記者会見で明らかにした。
クラーク氏は公共利益部門の責任者を務めており、今回の来日は日本法人の設立から1周年を迎えたことに合わせたものだ。13日には古川俊治デジタル相と会談し、日本との関係構築を進めている。
記者会見では、サイバーセキュリティー分野における協力に加え、日本の産業技術に対する評価やデータセンター建設の検討状況についても説明した。同社はAIの安全な利用を進めるため、日本との協力を重視する姿勢を明確にした。
サイバー防衛で攻撃を防ぐ側の優位性確保へ
アンソロピックが日本との連携で重点を置く分野の1つが、AIを活用したサイバー防衛だ。クラーク氏は、政府機関や国内企業との協力を通じて、サイバー攻撃に対する防御能力を高める取り組みを追求すると説明した。
特に、攻撃者に対して防御側が優位に立てるような技術の活用を目指す考えを示した。日本のサイバー防衛に同社の技術を役立てる方法についても、検討を進める方針だ。
一方、国内外で発生している不正アクセスや情報流出とAIの関係については、慎重な説明を行った。クラーク氏は、攻撃の詳細を把握していないと前置きしたうえで、ハッカーが利用可能なAIツールを攻撃に使用している可能性を指摘した。
ただし、AIが自ら攻撃を判断して実行した事例については、確認していないと説明した。AIの悪用と自律的な攻撃の発生を区別し、現時点で把握している情報の範囲を明らかにした。
AIモデルの悪用防止に向けた技術的対策を推進
クラーク氏は、サイバー攻撃者が新たな技術を利用する状況についても説明した。企業が業務の効率化などに利用できるツールを導入する一方で、攻撃者も入手できる技術を活用すると指摘した。
アンソロピックは、自社のAIサービスが不正行為に使われることを防ぐため、セキュリティー技術による対策を実施している。ただし、AIモデルを提供しているのは同社だけではなく、他社製品や利用者が内部のパラメータを変更できるオープンウエートモデルも存在する。
こうしたAI技術の利用環境を踏まえ、同社は自社サービスの保護に取り組むとともに、サイバー防衛に関する協力の可能性を探っている。日本の政府機関や企業との連携も、その取り組みの一環として位置付けられている。
日本の産業技術を評価しデータセンター建設も検討
クラーク氏は、日本が持つ技術的な強みについても言及した。AI関連のサプライチェーン、科学的な機器の製造、ロボティクスの分野で専門性を有していると評価し、今後の技術発展に対応するうえで有利な条件を備えているとの見解を示した。
さらに、アンソロピックが世界各地で進めているデータセンター建設について、日本国内で実現する方法を探っていることを明らかにした。具体的な建設場所や整備時期については、今回示された情報に含まれていない。
日本との協力については、サイバーセキュリティーだけでなく、国内の技術的な専門性にも注目している。クラーク氏は、大きな技術的変化が始まる時期を迎える中、日本には飛躍的な成長に向けた準備が整っているとの認識を示した。
AIの安全性確保を軸に日本での協力拡大を推進
日本での事業展開に関する説明と並び、クラーク氏はAI技術の安全性を確保する必要性を強調した。世界各国でAIを安定的かつ安全に開発するため、これからの数年間が重要になるとの考えを示した。
同社のダリオ・アモデイCEOは、AI開発を減速させる必要性を訴えている。クラーク氏も、安全対策が不十分な場合には、開発の速度を抑える対応が必要になるとの認識を示した。
技術開発を自動車の運転に例え、進む先の危険を把握できなければ、安全に前進する判断はできないと説明した。AIの能力向上を進める一方で、その危険性を確認することが重要だという立場だ。
アンソロピックは、日本との協力を通じてサイバー防衛へのAI活用を追求するとともに、国内データセンターの建設も検討している。日本法人設立から1年を迎え、安全対策の強化と日本での事業展開に向けた取り組みを進める方針を示した。