国防総省の指定を米連邦地裁が違法と判断へ
米カリフォルニア州の連邦地裁は27日、AI開発企業アンソロピックを国防総省が国家安全保障関連のブラックリストに指定した措置を認めない判断を示した。判事は指定について違法で根拠を欠くとし、アンソロピック側の主張の大半を認めた。今回の判断により、政府機関やその取引先企業が同社のAIモデル「クロード」を調達・利用する際、ブラックリスト指定を理由とする障壁は取り除かれることになる。安全保障を理由とした企業排除の妥当性に、司法が明確な制限を示した形だ。
自律型兵器と国内監視への利用制限が対立の発端
対立の発端は、アンソロピックがクロードを自律型兵器や国内監視に利用することを認めなかった点にある。国防総省は2026年3月、こうした使用制限を理由に同社をサプライチェーン上のリスクと位置付け、国家安全保障に関係するブラックリストへ掲載した。AIモデルの用途を企業側が制限する方針と、安全保障分野で幅広い利用を求める政府側の考えが正面から衝突する形となった。利用条件を維持したい企業と、軍事運用上の柔軟性を確保したい政府の立場の違いが訴訟へと発展した。
アンソロピックは権利侵害として政府を提訴へ
アンソロピックは指定に対し、言論の自由や適正な手続きを受ける権利を侵害する違法な措置だとして提訴した。政府による決定は報復的な排除に当たり、憲法上の権利を損なうと主張していた。地裁判事は、国家安全保障を理由に政府への批判者を処罰したり報復したりすることは認められないとの趣旨を示し、政府側の主張を退けた。判決は、安全保障上の目的が示された場合でも、特定企業を排除する措置には法的な根拠が求められるとの立場を示す内容となった。
米司法省は軍事運用上の不確実性を強く主張
一方、米司法省は裁判所への提出書類で、クロードに設けられた使用制限が解除されなければ、国防総省による利用に不確実性が残ると反論していた。作戦中に軍事システムが機能しなくなる恐れを挙げ、安全保障上の実害が生じるとの立場を示した。政府側は、AIモデルの利用条件が軍事システムの継続的な運用に影響する点を問題視していた。裁判では、企業がAIの用途に条件を設ける権限と、政府が安全保障上の必要性を理由に調達先を選別する権限の境界が争点となった。
別訴訟も継続しAIと政府の法的対立は残る
アンソロピックは今回の判決を歓迎し、国家安全保障のためのAI活用を巡り、政府との協力を今後も続ける姿勢を示した。国防総省はコメント要請に応じていない。同社は民間政府契約からの排除につながる可能性がある別の指定についても、ワシントンで訴訟を継続している。今回の判断で国防総省による指定は効力を失うが、政府との法的対立そのものがすべて解消されたわけではない。AI企業による技術の用途制限と政府の調達・安全保障政策との緊張は残っており、別件の訴訟を含む今後の司法判断が焦点となる。