欧州市場縮小でロシアLNGはアジア重視を強化
ロシアの液化天然ガス事業を巡り、欧州からアジアへ販売先を移す動きが大きな課題となっている。業界関係者やアナリストによると、アジア向けの輸送では物流費が少なくとも2倍に膨らみ、ロシアのLNG収入は減少する見通しだ。欧州への販売環境が厳しくなる一方、新たな市場への輸送距離と費用が収益面の負担となっている。
EUはウクライナ戦争を受けた対ロシア措置として、2027年初めからロシア産LNGの輸入を全面的に禁止する方針を示している。ロシアは従来の主要市場に代わる販売先の確保を迫られている。
アジア向け輸送は日数と物流費の増加が大きな負担
輸送距離の差は大きい。北極圏のヤマル半島から欧州までLNGを運ぶ場合、所要日数は約17~20日とされる。一方、アジアまでスエズ運河経由で運べば50~60日、喜望峰経由では70~80日を要する。
ロシア北極沿岸を通る北極海航路でも50~65日かかる。欧州向けと比べて航海期間が大幅に長くなるため、輸送費の上昇が販売価格や収益を圧迫する要因となる。関係者は、制裁への対応を含む複雑な条件も加わり、ロシア産LNGが割高になる可能性を指摘している。
制裁対象プラントからの購入には慎重な姿勢が続く
ロシア側は欧州以外の買い手との長期的な契約を求める姿勢を示している。プーチン大統領は2026年3月初旬、欧州へのガス供給を直ちに停止し、別の購入国から長期契約を求める可能性に言及した。ただ、新たな需要先の獲得は容易ではない状況にある。
業界筋によると、インドは米国の制裁対象となっているロシアのプラントからLNGを購入することを拒否した。輸送距離だけでなく、制裁に伴う取引上の問題も販路拡大の障害となっている。
北極圏LNG事業でも権益構成の見直しが進展
こうした市場環境の中、北極圏の大型開発案件「アークティックLNG2」でも出資構成が変化した。フランスのトタルエナジーズは8月27日、保有していた10%の持ち分をノバテクの子会社へ移す手続きを完了した。
トタルは2022年2月のウクライナ侵攻後、同年3月に追加出資を行わない方針を決定していた。プーチン大統領は2026年6月、ノバテク子会社による権益取得を承認していた。譲渡後、ノバテク側の保有割合は70%となった。
輸出先転換と事業再編がロシアLNGの収益環境を圧迫
アークティックLNG2の残り30%については、JOGMECと三井物産が共同で10%、中国のCNOOCとCNPCがそれぞれ10%を保有している。トタルの持ち分移転によって、同事業ではロシア側の比率が一段と高まった。
同時に、ロシア産LNGは欧州市場の縮小とアジアへの輸送コスト増という2つの問題に直面している。欧州なら20日前後で到達できる地域から、最大70~80日を要するルートへ販売先を移すことは物流面の負担を大きくする。権益構成の変更が進む北極圏のLNG事業と、輸出先の転換を迫られるロシアのエネルギー産業は、ともにウクライナ戦争後の市場環境の変化を受けた動きとなっている。