政府売渡価格は10月から1トン7万20円に上昇
農林水産省は9月9日、輸入小麦を製粉会社などへ販売する政府売渡価格を10月から引き上げると発表した。主な5銘柄の平均は1トン当たり7万20円となり、前の半年間と比べて12%上昇する。金額では1トン当たり7500円の引き上げとなり、2027年3月まで適用される。
国内で消費される小麦の8割以上は海外産で、主な調達先にはアメリカやカナダなどがある。安定して供給するため政府がまとめて輸入し、製粉会社などへ販売する制度が採られている。売渡価格は半年単位で改定され、海外の小麦相場や為替、輸送費などの変化が反映される。
小麦代の比率は薄力粉20%、食パン7%の水準
今回の値上げで注目されるのが、家庭向け商品の店頭価格への影響だ。小売価格のうち小麦代が占める割合は、家庭用薄力粉で約20%、食パンでは約7%とされている。商品価格の全体が小麦そのものの価格で構成されているわけではないため、政府売渡価格が12%上昇しても、その上昇率がそのまま小売価格に及ぶわけではない。
このため、今回の改定による店頭価格への反映額は数%以下にとどまり、影響は限定的とされる。ただし、パンやうどんなど小麦を原材料として使う商品は幅広い。製品ごとに小麦の使用割合や価格構成が異なるため、実際の影響も商品によって差が出る。
中東の緊張と円安が輸入小麦の費用を押し上げ
政府価格を押し上げた背景には、海外から小麦を調達する際の費用増がある。円安が進んだことで輸入負担が膨らんだほか、中東情勢の悪化に伴う原油価格の上昇で燃料費も増えた。ホルムズ海峡周辺の緊張も、輸送コストを高める要因となっている。
加えて、ロシアとウクライナによる攻撃の応酬を受け、国際市場で小麦価格が上昇した。原料価格と物流費の双方が上向いたことで、政府が国内へ売り渡す価格にも上昇圧力がかかった。今回の12%引き上げは、こうした複数の要因を反映したものとなる。
7万円台への上昇は2023年以来3年半ぶり
1トン当たりの平均売渡価格が7万円を上回るのは、2023年4月期以来3年半ぶりとなる。2023年当時はロシアのウクライナ侵攻による影響で価格が上昇し、過去最高の水準に達していた。今回も海外の情勢変化が国内の小麦価格へ波及する形となった。
小麦は輸入への依存度が高く、為替や国際商品市況だけでなく、輸送に関わる燃料価格の影響も受ける。政府による一括調達は安定供給を目的とするが、調達費用の増加は半年ごとの売渡価格に反映される。今回の改定でも海外で生じたコスト上昇が政府価格に表れた。
食品価格への反映度合いを農林水産省も注視
10月からの売渡価格引き上げは、製粉会社などの原材料調達費を押し上げる。小麦を使う食品は多いものの、小売価格に占める小麦代の割合は商品ごとに異なり、値上げ幅がそのまま消費者価格へ転嫁される構造ではない。今回の改定による直接的な影響は、数%以下に収まるとされている。
農林水産省はパンやうどんをはじめとする関連商品の価格推移を確認していく方針だ。政府売渡価格は2027年3月までの半年間適用されるため、今後は原材料費の増加が各商品の価格にどの程度反映されるかが焦点となる。小麦価格と店頭価格の動きを切り分けて見る必要がある。