不正売買8200億円に達する口座被害が深刻化
証券口座が第三者に不正利用され、本人の知らない間に株式などを売買される被害が広がっている。金融庁によると、2025年1月から2026年7月までに確認された証券会社への不正アクセスは1万9142件に上り、不正売買の総額は約8200億円となった。こうした状況の中、被害を受けた個人投資家が証券会社側の補償内容を不十分として法的手続きに踏み切った。
個人投資家79人が半額補償の扱いに異議
8月27日、証券口座乗っ取りの被害者79人が、SBI証券、マネックス証券、楽天証券、松井証券の4社を対象に東京簡易裁判所へ調停を申し立てた。申立人は全国の40代から80代の男女で、身に覚えのない取引によって保有資産を失ったとしている。
ネット証券各社は被害に対する補償を原則として半額としているが、申立人側はこれを受け入れず、被害全体の回復を求めた。約3000万円で取得した株式を失った78歳の男性も、本人側に責任がない中で補償が半分に限定されることに異議を示した。
被害者側は口座を被害前の状態に戻すよう要求
申立人側が求めているのは、単純に一定額を支払う補償だけではない。不正取引で失われた有価証券を返還し、口座を乗っ取り前と同じ状態に戻すことを要求している。申立書などでは、被害者が去年10月までの1年間に保有株式などを無断で売却され、その後も本人が関与していない売買が続いたとされている。
被害者の会の堤昭仁さんは、証券会社のセキュリティー体制に不備があったとの認識を示し、証券会社側に責任ある対応を求めた。申立人側は、利用者に落ち度がないことを前提として原状回復を主張している。
2025年春から被害急増、刑事事件にも発展
証券口座の不正利用は2025年春ごろから急激に増加した。IDやパスワードなどの認証情報が盗み取られ、第三者が口座へアクセスしたうえで株式などを勝手に取引する事例が相次いだ。金融庁の数字からも、被害件数と取引金額が大きな規模に達していることが分かる。
不正取引を巡っては刑事事件も起きている。2026年3月には、不正アクセスや売買に関与し、金融商品取引法違反の相場操縦などの罪に問われた男について、東京地裁が懲役3年、執行猶予5年、罰金400万円、追徴金約7800万円の判決を言い渡している。
集団調停で問われる証券会社側の補償対応
調停申し立てに対し、SBI証券は申立書を受け取っていないため現段階ではコメントできないとした。楽天証券も通知が届いていないことを理由に回答を控え、松井証券も申立書を確認していないとしている。
今回の手続きでは、大規模化した証券口座乗っ取り被害に対して、証券会社が示している半額補償と、被害者側が求める全額回復との隔たりが明確になった。79人の申立人は、本人の意思と無関係に失われた株式などについて、被害発生前と同じ口座状態への回復を求めている。