米30年債利回りが再び高水準へ上昇し警戒強まる
米国の長期国債利回りが再び上昇している。24日の米30年物国債利回りは5.25%前後で推移し、前週につけた19年ぶりの高水準となる5.3371%に近づいた。米財務省は19日に長期国債の買い戻し拡大策を示し、発表直後には30年債利回りが5.18%まで低下したが、その効果は長続きしなかった。財政赤字や物価への懸念に加え、企業側の大規模な資金需要が債券市場に新たな負担を与えている。
巨額のAI設備投資拡大が市場の資金需要を押し上げ
債券市場で注目されているのが、ビッグテックによるAI関連投資の急拡大だ。S&Pグローバル・レーティングスは、メタ、アルファベット、アマゾン、マイクロソフト、オラクルの5社が今年、設備投資に約7500億ドルを投じると見積もる。イングランド銀行によると、これら企業の2028年の設備投資に対する市場予想は、昨年末には6000億ドル未満だったが、最近では1兆ドルを超えた。AI基盤整備に必要な資本の規模が急速に膨らんでいる。
社債発行の急増で米国債との資金獲得競争が鮮明に
設備投資を賄うための社債発行も急拡大している。BNPパリバによると、AIハイパースケーラーの今年の債券発行額は10日までに2200億ドルとなり、前年同期の125億ドルから18倍近い規模に増えた。ゴールドマン・サックスは今年の発行額を2500億ドル、来年は4000億ドルと予想する。米政府も国債を発行する中、信用力の高い大手企業が同じ投資家資金を求めることで、債券市場では資金獲得競争が強まっている。
投資家が高い利回りを求め社債条件にも変化広がる
大規模発行の影響は社債の条件にも表れている。アルファベットが19日に初めて発行した豪ドル建て債券では、20年物のクーポン金利が年6.9%となった。アマゾンの長期債も米国債利回りを約1.20%上回る水準で価格が決まった。AI関連社債と米国債の金利差は平均0.89%で、一般の投資適格社債より0.09%高く、20年以上の長期債では平均1.18%まで拡大している。
投資家を呼び込むため、発行体が高い利回りを提示する状況が鮮明になっている。ブラックロック投資研究所は、AI構築の加速によって資本の希少性が強まり、その影響が債券利回りに表れていると指摘する。DWSも企業が継続的に新規債を発行すれば、より高い利回りが必要となり、米国債との金利差が拡大するとの見方を示している。
債券市場の資金争奪が長期金利の高止まりを招く構図
米国では40兆ドルを超える政府債務と財政赤字、物価動向、FRBの政策をめぐる不透明感も金利上昇要因となっている。そこにAI投資のための社債発行が重なり、米国債とビッグテック債が投資資金を競い合う構図が生まれている。投資家は米政府が発行する債券と信用力の高い大手企業の債券を比較しながら資金を配分できるため、資金を確保する側には高い利回りを提示する圧力がかかる。
高い米金利は為替市場でもドルを支える要素となり、25日の東京市場では円が1ドル=159円台前半で推移した。午後5時時点では159円44~45銭と前日より29銭円安・ドル高となった。米債券市場の資金需給と国際情勢への警戒が重なる中、長期金利と為替の双方でドルを取り巻く資金の流れが意識されている。