巨額AI投資が債券市場の需給を一段と圧迫
米国の大手テクノロジー企業が進める人工知能(AI)への巨額投資が、債券市場にも影響を広げている。米30年物国債利回りは24日に5.25%前後となり、前週に付けた19年ぶりの高水準となる5.3371%に再び近づいた。
米財務省は19日に長期国債の買い戻し拡大を発表し、30年物利回りは一時5.18%まで低下した。しかし、その後は再び上昇した。財政赤字や物価への懸念に加え、AI投資のための資金需要が債券市場の需給を引き締めている。
5大ハイパースケーラーの投資額が急膨張する
S&Pグローバル・レーティングスは、メタ、アルファベット、アマゾン、マイクロソフト、オラクルの5社が2026年の設備投資に約7500億ドル、約119兆円を投じると推定している。
イングランド銀行によると、これら企業の2028年の設備投資に対する市場予想は、2025年末時点では6000億ドル未満だったが、最近では1兆ドルを超えた。AI向けデータセンターや関連インフラの整備競争が続き、必要とされる資金の規模も急速に拡大している。
社債発行が前年同期比で18倍近くまで増加
巨額投資を支えるため、AI関連企業による債券発行も増えている。BNPパリバによると、主要AIハイパースケーラーによる2026年の債券発行額は10日までに2200億ドルに達した。前年同期の125億ドルと比べ、18倍近い規模となる。
ゴールドマン・サックスは年間の発行額を2500億ドルと見込み、2027年には4000億ドルまで増えると予想している。AIインフラの整備が加速するほど企業の資金需要は強まり、市場から大規模な資金を調達する動きが続く。
米国債と企業債が投資資金を奪い合う構図に
社債の供給増加に伴い、投資家が要求する利回りも高まっている。アルファベットが19日に初めて発行した豪ドル建て債券では、20年物のクーポン金利が年6.9%となった。アマゾンの長期債も米国債を約1.20ポイント上回る利回りで価格が決まった。
AI関連社債と米国債の金利差は平均0.89ポイントで、一般的な投資適格社債より0.09ポイント広い。20年以上の長期債では差が平均1.18ポイントとなり、投資家を呼び込むため企業側がより高い利回りを提示する傾向が表れている。
財政不安とAI資金需要が長期金利を押し上げる
米国債市場には、40兆ドルを超える政府債務や財政赤字、物価動向、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策を巡る不確実性が存在する。そこへAI企業による大規模な社債発行が重なり、政府と大手企業が同じ投資資金を求める状況となっている。
投資家は米国債だけでなく、信用力の高いテクノロジー企業の債券も選択できる。AI投資がさらに拡大し、企業による資金調達が続けば、投資資金を確保するために高い利回りを提示する構造が続く。AIを巡る設備競争は産業分野だけでなく、長期金利を左右する債券市場の需給にも大きく関係する局面に入っている。