約8.9兆円の概算要求に組織改革費も盛り込む
防衛省は2027年度の予算編成に向け、概算要求額を約8兆9000億円とする方向で調整している。過去最大の水準となり、装備品や先端技術への投資だけでなく、省内組織や隊員支援の仕組みを改める経費も盛り込む。防衛を支える組織、人材、産業基盤を幅広く整備する構成となっている。
要求案では、防衛力を支える基盤の拡充を重点分野の1つに位置付けた。自衛官の処遇改善や装備品の生産体制に加え、海外との連携を担当する組織や退職後の隊員を支援する機関も対象となる。装備の高度化だけにとどまらず、防衛省・自衛隊を支える制度そのものを見直す方針が示された。
国際政策局新設で海外との防衛協力体制を強化
組織改編では、外国との防衛協力を担う新たな「国際政策局」の設置を検討する。国際連携に関する政策を専門的に扱う組織を設け、海外との防衛分野での協力を進める司令塔として位置付ける。防衛省の体制を強化する施策の1つとして、概算要求に関連経費を盛り込む。
安全保障を巡る取り組みが多岐にわたる中、組織面から政策遂行能力を整える狙いがある。新局の設置は、防衛装備や部隊運用と異なり、省内の政策立案・調整機能に焦点を当てた施策となる。防衛力を装備面と行政組織面の双方から支える考え方が要求案に表れている。
退職自衛隊員と家族への支援体制を一元化へ
人材に関する施策では、退職した自衛官やその家族を対象とする支援機関の新設が盛り込まれた。「退職自衛隊員・家族支援庁」を110人体制で設け、これまでの支援機能をまとめて担う計画だ。現役隊員だけでなく、退職後まで含めた支援体制の整備を進める。
同時に、自衛官の給与制度についても見直しを行う方針が示されている。人材確保や勤務を支える仕組みを整えることは、装備の導入とは異なる角度から防衛基盤を支える取り組みとなる。部隊を構成する人員への対応を予算要求の柱として明確に位置付けている点が特徴だ。
AI基盤整備と装備品生産体制の強化を並行推進
組織改革と並び、運用面の高度化も進める。統合作戦司令部には、AIを使って迅速で正確な判断を補助する仕組みを導入し、必要なデータを集約するクラウド基盤を整える。次世代のAI関連基盤として「AIオーケストレーター」の構築も盛り込まれている。
装備品の供給面では、国が製造施設を保有した上で、民間企業に生産や管理を任せる新制度を設ける方針だ。長期にわたる事態でも必要な装備を確保できる体制を構築する。また、水中から発射する極超音速ミサイルや攻撃用無人機、複数の迎撃手段を組み合わせる近距離対空システムなどの開発も計画している。
安全保障3文書改定を見据え年末予算へ焦点
2027年度の要求には、金額を現時点で設定しない施策が多く含まれている。政府が年末にかけて安全保障に関する3文書の改定を進めるため、その議論を受けて必要額を決める「事項要求」が設定されているためだ。従って、概算要求時点の約8兆9000億円が最終的な予算規模になるわけではない。
要求案は、AIや無人機を取り入れた新たな防衛手段、継続的な作戦能力、組織や人材を含む基盤整備を同時に進める内容となった。年末の予算案では、3文書の見直しを踏まえて各事業の規模や経費が具体化されることになる。