米AI企業の大量書籍収集で国内取引が判明
米AI開発企業アンソロピックによる大量の書籍収集を巡り、日本の出版流通会社との取引が明らかになった。日販グループホールディングス傘下の日販アイ・ピー・エスが、アンソロピックに日本国内で発行された書籍を販売していた。
日本書籍出版協会が日販側に事実関係を問い合わせたところ、10月5日付の書面で取引を認める回答が示された。協会には約380社の出版社が加盟しており、加盟社が発行した書籍も販売対象に含まれていた。
米国訴訟の資料に浮上した日本企業との接点
取引が注目されるきっかけとなったのは、アンソロピックを相手取った米国での著作権侵害訴訟だった。米国の作家らは2024年8月、同社が書籍をデジタル化したほか、海賊版サイトから書籍データを取得してAI学習に利用したとして提訴した。この訴訟は2026年7月までに和解した。
訴訟で示された資料には、アンソロピックが欧米やアジアの出版流通業者から大量の書籍を集めていた状況が記録されていた。その中に日販とみられる「Nippan Japan」が複数回登場したことで、日本の出版物が同社に渡っていた事実が注目されることになった。
取引は2024年末から1年間にわたり継続
日販側の回答によると、海外向けの出版事業を手掛ける日販アイ・ピー・エスは2024年11月、アンソロピックとの契約を結んだ。その後、2024年12月から2025年12月まで書籍を販売していた。
ただし、販売した書籍のタイトルや出版社、冊数などの詳細は公表していない。日販側は各出版社から寄せられる問い合わせに個別対応するとしている。取引そのものは認めた一方、具体的にどの出版物がアンソロピックへ渡ったのかについては全体像が示されていない。
書籍の利用目的巡り日販と出版社側に隔たり
日販側は契約を結ぶ前にアンソロピックへ書籍の用途を確認していたとしている。その時点で受けた説明から、購入目的がAI学習にあるとの認識には至らなかったという。一方、アンソロピックはAI開発に向けて大量の書籍を収集し、スキャンするプロジェクトを進めていたとされている。
日本書籍出版協会は9月、会員社が発行した書籍をアンソロピックに販売した事実があるか日販側に確認を求めた。さらに、AI学習を目的とする書籍の供給や販売を停止するよう要請した。出版関係者からは、出版文化を支える流通企業の対応に対して強い批判も出ている。
著作権法とAI学習の関係が改めて焦点に
日本の著作権法では2018年の改正で30条の4が設けられ、AIによる文章やイラストなどの学習について、著作権者の許可を得ない利用が原則として認められている。一方で、著作権者の利益を不当に害するケースでは適用が制限される。
どのような利用が「利益を不当に害する場合」に当たるのかについては、詳細な線引きが示されていない。今回明らかになった取引では、日販側がAI学習を目的とする購入との認識を否定している一方、販売された書籍の詳細は非公表のままとなっている。大量の著作物を利用するAI開発が進む中、書籍流通の段階で利用目的をどのように確認し、出版社や著作者の利益と向き合うかという問題が表面化した。