罰則なしの基本原則でAI事業者に自主対応を促す
政府が生成AIに関する知的財産権保護の新たな枠組みを整える。内閣府が18日に有識者会議へ示した基本原則案は、生成AIを開発、提供する企業に学習に関する情報公開や照会対応を促す一方、法的拘束力や違反時の罰則は設けない。2025年成立のAI法を踏まえた取り組みで、技術開発を過度に制約することを避けながら、著作物を巡る権利保護を進める構成となった。基本原則案は有識者会議で事実上了承され、政府は近く正式決定する。
海外企業を含むAI開発者とサービス提供者が対象
原則の対象には、文章や画像などを生成するAIシステムの開発企業に加え、それらの技術を組み込んだサービスを提供する事業者も含まれる。国内に拠点があるかどうかだけでは対象を区分せず、日本の利用者向けにシステムやサービスを提供していれば海外企業にも適用する。生成AI市場では国外の事業者が日本国内でも広くサービスを展開しているため、国内企業だけに対応を求める制度とはしない。日本市場で事業を行う各社に共通の透明性確保を求める枠組みとなる。
順守が難しい場合は理由を説明する仕組みを採用
基本原則は、学習方法や使用データの種類の概要公開、権利者への情報提供、AI利用者への回答を主要な項目として掲げる。企業にはホームページなどを通じて対応内容を明らかにするよう促すが、すべての項目を一律に強制する仕組みではない。実施できない場合には理由を説明する「コンプライ・オア・エクスプレイン」の考え方を取り入れる。営業秘密など企業活動に影響する機微な情報についても、無条件で公開を義務付けるものではなく、情報公開と事業上の秘密の双方に配慮する。
企業側では確認や照会対応の業務負担増に懸念
権利者が法的手続きを進める際には、自身の創作物などに関係するURLが学習情報に含まれるかについて事業者へ照会できるよう対応を促す。AIの利用者についても、生成された内容が第三者の権利を侵害することを懸念する場合、類似するコンテンツが学習情報にあるか確認できるようにする。一方、事業者からは大量の学習データを確認し、個別の問い合わせに回答するための作業量や費用が膨らむとの指摘が出ている。こうした負担がAI開発やサービス利用を阻害するとの懸念も示された。
運用状況と国際動向を踏まえ政府が原則を見直し
内閣府は基本原則を受け入れた企業や各社の対応状況を公表し、法的な制裁を設けない中でも一定の実効性を確保する考えだ。事業者には取り組み状況を継続的に示し、原則として毎年内容を確認することも求める。政府は今秋にも新たな枠組みの適用を始める予定で、運用後に生じる課題や海外のAI規制を確認しながら必要な修正を行う。生成AIの利用拡大を維持しつつ、創作者らが持つ権利への対応を企業に促す制度運営が進められる。