監査証拠が不足し2年連続の意見不表明という事態に
ニデックが9月30日に提出した2026年3月期の有価証券報告書に対し、監査法人は監査意見を表明しなかった。財務諸表の内容が適切かどうか判断するために必要な証拠を十分に確保できなかったことが理由となった。
同社は2025年3月期の有価証券報告書でも監査意見を得られておらず、2年連続で「意見不表明」となった。不正会計に関与した役職員が、現在も財務報告の一部に携わっていることなども問題視された。
今回の有価証券報告書は、当初の期限から3カ月遅れて提出された。9月30日は提出期限を延期できる最終日となっており、財務情報の開示を巡って異例の状況が続いている。
不正な利益計上などで累計1607億円の水増し判明
一連の問題では、昨年秋に設置された第三者委員会が社内の会計処理について調査を進めた。その結果、不適切な収益計上などによって純利益が累計1607億円水増しされていたことが明らかになった。
本社やグループ会社では、経営陣の関与や認識がある中で、資産評価を見直す時期を恣意的に検討していた疑いを示す複数の資料も確認された。会計処理の問題が一部の担当者に限定されない形で調査対象となっている。
ニデックは不正会計に伴い、過去5年分の決算を修正して公表する方針を示していた。しかし作業は9月30日までに完了せず、修正版の公表は延期された。
品質面でも約840件の不適切行為が相次いで発覚
問題は財務報告だけではなく、製品の品質管理にも広がった。家電や自動車向けなどの部品について、顧客の承認を受けずに設計内容を変更するなどの不適切な行為が多数確認された。
判明した事案は約840件に上る。会計処理と製品品質という異なる領域で問題が相次いだことで、ニデックは複数の課題への対応を同時に進める状況となった。
こうした一連の問題は経営陣にも波及した。創業者の永守重信氏は昨年12月、代表取締役を辞任しており、その後は岸田光哉氏が社長として経営のかじ取りを担っていた。
巨額損失を一括計上し最終赤字5646億円まで拡大
会計問題の影響は2026年3月期の業績にも大きく表れた。ニデックは自動車や家電向けモーターを含む幅広い事業で資産価値や将来の収益見通しを精査し直し、6320億円余りの損失を計上した。
この結果、連結ベースの最終損益は5646億円の赤字となった。前年度の黒字から一転し、同社にとって過去最大の純損失となった。
多額の損失を今回の決算に反映した一方、過去5年分の決算修正は完了していない。監査法人からも意見を得られない状態となり、財務報告を巡る問題は2026年3月期決算の発表後も残っている。
相次ぐトップ辞任で新体制による経営立て直しへ
永守氏の辞任後に経営を担っていた岸田氏も、2026年3月期決算の発表前日の9月29日付で社長を辞任した。過去に適切とはいえない言動が確認されたことなどが辞任につながった。
後任の社長には、専務執行役員だった戒田理夫氏が就任した。創業者の代表取締役辞任に続いて社長も交代し、不正会計や品質問題への対応が続く中で経営体制も大きく変化した。
ニデックには過去の決算修正を進めるとともに、監査に必要な体制を整え、品質面で発覚した多数の問題にも対応する必要がある。新たな経営体制のもと、財務報告の正常化と事業運営の立て直しが課題となっている。