米政権がICC当局者への制裁を本格的に強化
トランプ米政権は国際刑事裁判所(ICC)への圧力を強めている。18日にはICCの赤根智子所長を制裁対象に指定し、翌19日には国務省が同盟国に対してICCへの支援停止を求める考えを示した。米国はICCに加盟しておらず、同機関が米国の主権を脅かしているとの立場から対抗措置を拡大している。
赤根所長指定の背景にある反ICC政策の拡大
ルビオ国務長官は7月、加盟国にICCからの離脱を促すとともに、裁判所関係者への制裁を強化する方針を明らかにした。その後、南米ベネズエラとアフリカ北部チャドが脱退を表明しており、米国の働き掛けは加盟国にも及んでいる。赤根氏への制裁も、こうした反ICC政策の延長線上に位置付けられる。
ルビオ氏は米紙への寄稿で、米国がカリブ海などで実施している「麻薬密輸船」への攻撃を、ICCの元主任検察官が「人道に対する罪」に当たると批判したことを問題視した。米国民がICCの訴追対象となることへの懸念を理由として挙げている。一方、外交問題評議会(CFR)のジョン・ベリンジャー非常勤上級研究員は、現職のICC当局者は米国人を訴追する権限を主張していないと指摘している。
加盟国に脱退促しICC支援停止も同盟国へ要求
米国務省は19日、赤根氏への制裁は日本政府に向けたものではないと説明した。同時に、同盟国にはICC支援の停止を期待すると表明し、裁判所への資金面や政治面での支えを弱める姿勢を鮮明にした。日本はICCの最大の資金拠出国であり、米国の要請は同盟国との間でも新たな論点を生んでいる。赤根氏への措置が日本政府そのものを対象としていないと米側が明示した一方、ICCへの支援継続を巡っては同盟国にも判断を迫る形となった。
トランプ大統領は昨年2月、ICC当局者への経済制裁などを可能にする大統領令に署名した。背景の一つには、パレスチナ自治区ガザでの戦争犯罪の疑いを巡り、ICCがイスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状を出したことへの反発がある。親イスラエルの支持層への配慮も、政権の対ICC姿勢を形づくる要素として記事では指摘されている。
中間選挙前に強まる米国第一の政治メッセージ
トランプ政権は対イラン交渉の停滞に加え、2月に始めた対イラン軍事作戦による原油や肥料の価格上昇を受け、支持率が低下しているとされる。こうした中で「米国第一」と「国際機関から主権を守る」という構図を前面に出し、11月の中間選挙を意識した支持基盤への訴えを強めているとの見方が示されている。ICCへの強硬姿勢は外交・司法問題だけでなく、米国内政治とも結び付いている。
ICCを巡る米国と国際社会の溝がさらに拡大
国連やEU、ドイツ、オランダは赤根所長への制裁に懸念や批判を表明し、ICCへの支持を相次いで打ち出した。これに対し米国は、裁判所の権限が自国の主権を侵害するとの主張を続け、加盟国や同盟国にも対応を求めている。ICCの独立性を重視する国際社会と、主権防衛を掲げるトランプ政権の隔たりは、赤根氏への制裁を機に一層はっきりした。