大型支援で国産AI開発が加速する局面に入る
経済産業省は6月30日、国産人工知能の基盤モデル開発を進める「Noetra(ノエトラ)」と産業技術総合研究所に対し、3873億円を支援すると発表した。支援は2026年度分の開発委託費として位置付けられ、国内で使えるAIモデルの研究開発を後押しする。米国や中国が先行するAI分野で、日本独自の開発基盤を整える狙いがある。
ノエトラ設立の狙いと開発体制が焦点となる
ノエトラは、ソフトバンクなどが設立した国産AI開発の新会社である。産経新聞によると、ソフトバンク、NEC、ホンダ、ソニーグループの4社が中核となって設けられた。AIモデルの開発には、ソフトバンクやAI関連新興企業プリファードネットワークスの技術者らも参加する。
同社は旧日本AI基盤モデル開発として発足し、国産基盤モデルの開発を担う。経産省は、国内企業が幅広く利用できるAI基盤の構築を重視している。特定企業に閉じた技術ではなく、日本企業全体の活用につながるモデル整備が支援の中心となる。
ロボット活用へ基盤モデル整備が進む段階に
今回の支援対象となるのは、現実空間でロボットを動かすフィジカルAIの基盤技術である。AIが言語だけでなく、画像や動画、音声、物理空間を認識する能力を備えることで、ロボット技術との融合が進む。経産省はこの分野を支援し、日本が強みを持つ製造業の競争力向上につなげる方針だ。
ノエトラは、高度な日本語理解や推論を備えた基盤モデルの開発にも取り組む。日本語環境に適したAIを整えることは、国内企業の業務利用を広げるうえで重要な要素となる。加えて、物理空間の認識に対応することで、工場や研究開発現場での活用も視野に入る。
産総研連携で研究支援を本格化する動き広がる
産業技術総合研究所は、国内外の研究機関と連携しながらノエトラを支える役割を担う。研究機関との協力を通じて、AIモデル開発に必要な知見や技術基盤を補完する。民間企業だけでなく公的研究機関も関与することで、国産AI開発の体制を厚くする構図となる。
また、経産省所管の新エネルギー・産業技術総合開発機構が支援事業に採択した。NEDOによる採択により、開発委託費としての支援が具体化した。国の資金支援と研究機関の協力を組み合わせ、国産基盤モデルの開発を進める。
国内利用拡大へ開発成果が問われる段階に
今回の支援は、国産AIを国内企業が使える形に整える取り組みとして位置付けられる。経産省は、先行する海外勢に対抗するため、国内で開発された基盤モデルの研究開発を後押しする。フィジカルAIの活用が進めば、製造業を中心にAI利用の範囲が広がる。
一方で、支援の目的は単なるモデル開発にとどまらない。日本企業が幅広く利用できる環境をつくり、産業競争力の強化につなげることが重視されている。ノエトラと産総研、NEDOを軸にした今回の枠組みは、国産AIの実用化を進めるうえで重要な取り組みとなる。