AIの進展が安全保障と金融に及ぼす懸念を表明
フランスのマクロン大統領は2026年9月22日、ニューヨークで開かれた国連総会の一般討論演説で、人工知能(AI)の急速な発展が国家の重要な機能に及ぼす影響について懸念を示した。特に、安全保障と金融システムに関わる危険性を取り上げ、AI技術の開発を巡る国際的な意思決定のあり方に問題を提起した。
演説では、AIの技術開発が米国と中国を中心に進み、少数の民間企業にも重要な権限が集まる状況を指摘した。特定の国や企業による判断が、他国の社会の将来まで左右することを認めるべきではないという立場を示した。
マクロン大統領は、こうした状況を変えるため、米中のどちらにも従属しない国々による新たな協力関係の構築を訴えた。
開発の決定権が一部に集まる現状への問題提起
マクロン大統領は、AIを巡る議論が米中と限られた企業によって主導される構造について異議を唱えた。特に問題視したのは、AIの研究や開発を進めるかどうかという判断まで、一部の主体が握る状況だ。
技術の発展に関する決定が限られた主体に集中すれば、開発に直接参加していない国々の社会にも、その判断による影響が及ぶ。マクロン大統領は、AIの将来を米中だけで決めるという考え方を否定し、各国が持つ能力を活用するよう求めた。
また、技術の発展を巡る権限の問題を、米中間の競争だけに限定せず、他国がどのような立場で参加するかという問題として取り上げた。大国のいずれかに依存するのではなく、独立した立場で技術開発に加わるための協力体制が必要だとの考えを示した。
幅広い地域に連携を求める多国間の技術協力案
マクロン大統領は、米中への依存を避けるための取り組みとして、オープンソースを活用した最先端AIの共同開発を提唱した。各国が持つ技術的な能力を結集し、特定の大国に頼らない形で開発を進める構想だ。
協力相手として、欧州、カナダ、インド、ブラジルなどを挙げたほか、アフリカや湾岸諸国、シンガポールにも参加を求めた。特定の地域にとどまらず、複数の大陸にまたがる協力関係を築く考えを示した。
この提案では、各国が単に開発された技術を利用するだけでなく、自らの能力を持ち寄って開発に参加することが想定されている。米中に依存しない選択肢として、多国間による共同開発という具体的な方向性を提示した。
ウクライナの冬に備えた攻撃停止の合意を要求
演説ではAIの問題に加え、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナ情勢についても言及した。マクロン大統領は、冬が近づく中で必要な備えを進める重要性を強調し、エネルギー施設への攻撃を停止するための早期合意を求めた。
さらに、黒海で行われる攻撃によって農産物の輸出が妨げられる問題も取り上げた。エネルギー関連施設への攻撃と、農産物の輸出を阻害する攻撃について、双方が停止することで合意する必要があるとの認識を示した。
マクロン大統領は国連総会に先立ち、ウクライナとロシアによるエネルギー分野への攻撃を相互に停止する構想についても協議していた。今回の演説でも、冬への対応と農産物の輸出という2つの問題を取り上げ、攻撃停止に向けた合意を急ぐよう求めた。
技術と外交の両面で国際的な協力を訴える演説
マクロン大統領の演説では、AI開発に関する国際的な意思決定と、ウクライナを巡る安全保障上の問題が、それぞれ取り上げられた。AIについては、技術の発展を左右する権限が米中や少数企業に集中することへの懸念を示し、各国による共同開発を提案した。
一方、ウクライナについては、冬を迎える前にエネルギー施設を巡る攻撃の停止と、黒海を通じた農産物輸出を妨げる攻撃の停止について合意するよう求めた。技術開発と軍事衝突という異なる課題に対し、いずれも複数の国が関与する必要性を示した形だ。
AIの分野では、米中への依存を避ける国々が連携し、独自の技術開発に参加する体制の構築を提唱した。ウクライナ情勢では、エネルギー施設と農産物輸出に関する攻撃停止を優先課題として示した。今回の国連演説を通じ、マクロン大統領は技術と外交の双方について、国際的な協力を求める立場を明確にした。