電力負担抑制へ石炭火力の役割を再評価する動き
JERAは6月24日の定例会見で、中東情勢の悪化に伴う電力料金の上昇を抑えるため、石炭火力発電の活用を強める考えを示した。東京電力グループと中部電力が折半出資する同社にとって、燃料価格の急変は電力供給と料金の双方に影響する。今回の対応は、有事の燃料戦略として石炭火力の役割を見直すものとなる。
石炭はLNGより二酸化炭素排出量が多く、脱炭素の流れの中で長期契約の比重は低下していた。JERAの石炭火力による電力は、需要家が必要な時に買う形が中心となっていた。しかしLNG価格の上昇が続く状況では、石炭火力を一定程度活用することが、電力コストの抑制につながる。
脱炭素下で変わる石炭火力契約の位置付けに注目
JERAは、石炭火力で発電した電力の長期購入契約を再開する方向で検討している。対象は法人向けの電力購入契約や、電力小売り事業者向けの契約である。早ければ今夏から再開を検討し、電力需要が高まる時期に備える。
この動きは、脱炭素政策の流れとエネルギー安全保障の課題が交差する局面を示している。平時には温室効果ガス排出の抑制が重視される一方、燃料供給に不安が生じた場合には、価格や安定供給も重要になる。JERAは、状況に応じて電源を使い分ける必要性を強調している。
年間発電コストで3兆円差とする試算公表へ
JERAは会見で、LNGのみで有事対応した場合と、石炭を併用した場合の発電コストに関する独自試算も示した。LNGだけで対応した場合、国内火力発電の年間総発電コストは16兆円に達するという。石炭を組み合わせた場合と比べ、3兆円高くなるとの内容である。
この試算は、燃料構成の違いが電力コストに大きく影響することを示している。LNG価格は中東情勢や供給設備の状況に左右されやすく、需給が引き締まると価格が上がりやすい。JERAは、燃料を分散して使用することで、価格高騰の影響を抑える方針を示している。
調達分散と電力需要増への対応方針を明確化
可児行夫会長兼グローバル最高経営責任者は、地政学的な緊張やエネルギー施設の建設コスト上昇に対応する必要があると述べた。燃料調達の分散を進めるとともに、今後の電力需要にも備える考えを示している。特にデータセンター向けの電力供給は、重要な対応分野として位置付けられている。
JERAは、7月から新たな電力メニューの提供も始める。これは電力使用が集中する時間帯にスポット価格が急騰するリスクを抑える内容である。中東情勢による燃料価格の変動が企業活動に及ぶ中、価格変動を和らげる商品設計も重要になっている。
社会安定を意識した有事の燃料戦略が焦点に
石炭火力を積極的に使えば、LNGより安価な電力を供給できる一方で、JERAの利益は短期的に減ることになる。奥田社長は、長期的には社会の安定につながり、結果として同社の利益安定にも寄与するとの考えを示した。電気料金の上昇を抑えることを、企業活動や社会全体の安定と結び付けている。
今後の焦点は、価格抑制、供給安定、脱炭素の3つをどう調整するかである。LNG市場の不安定化が続く中、石炭火力は有事対応の選択肢として再び注目されている。JERAの方針は、エネルギー安全保障と気候対応の両立をめぐる議論にも影響を与える。