SNSが奪う子供の時間にEUが対策強化
欧州連合(EU)が、子供のSNS利用をめぐる政策を一段と強化する。欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は9月16日、13歳未満によるSNS利用を禁止し、15歳未満の個人アカウント開設を認めない制度を導入する考えを明らかにした。
フォンデアライエン氏が問題視したのは、単純な利用時間だけではない。子供がSNSに多くの時間を費やすことで、他者と直接交流し、現実の生活の中で感情や判断に向き合う機会が減っているとの認識を示した。子供には何もしない時間も必要だとして、オンライン環境に偏らない成長の機会を確保する重要性を訴えた。
15歳の37%が毎日3時間以上利用
欧州委員会が示したデータでは、15歳の37%がSNSを1日3時間以上利用している。長時間利用は睡眠不足やうつ症状につながることが懸念される水準とされ、未成年者の利用実態が規制強化を後押ししている。
問題は利用時間に限られない。EU域内では若者の6人に1人がオンライン上のいじめを経験しているという。SNSが交流の場として定着する一方、未成年者が有害な行為や過度な利用にさらされる環境をどのように改善するかが、EU全体の課題として浮上している。
加盟国の独自規制からEU共通ルールへ
年齢制限を求める動きは加盟国ですでに具体化している。フランスでは7月、15歳未満によるSNS利用を制限する法律が成立した。スペインやギリシャも同様に、未成年者を対象とする年齢制限を導入する方針を示している。
これらの国は国内制度だけではなく、EU全体でSNSを利用できる最低年齢を設定するよう求めてきた。フォンデアライエン氏も以前からこの問題への対応に意欲を示していた。7月には児童精神科医らが13歳未満のSNS利用を制限するよう提言しており、今回の方針表明につながる議論が続いていた。
巨大ITのサービス設計も規制対象に
EUの取り組みは、子供側に利用制限を課すだけではない。SNS企業に対しても、利用者が長時間サービスを使い続けることを促す機能の見直しを求める。フォンデアライエン氏は、依存を強める仕組みを容認しない姿勢を打ち出した。
EUはこれまでも一般データ保護規則(GDPR)やデジタルサービス法(DSA)を通じ、デジタル企業への規制を整えてきた。7月には欧州委員会が、利用者の関心に応じた動画を次々と表示する「無限スクロール」に依存性があるとの見解を示し、メタなどへの対応を進めている。今回の法案でも、企業側のサービス設計が重要な論点となる。
制度導入後の効果と企業対応が焦点
ただ、年齢による利用制限だけで問題を解消できるかについては、専門家から効果を疑問視する意見も出ている。巨大IT企業は豊富な資金や人材を持ち、EU当局が実際にどこまで規制を徹底できるのかという課題も残る。
メタは8月下旬、米国内で18歳未満の利用時間を原則1日計2時間に制限する保護措置を導入する方針を発表した。一方、EUなど他の地域にも同様の措置を広げるかは示していない。米国のトランプ大統領もEUによるデジタル規制の強化に反発している。子供の利用条件、企業の責任、規制の執行をどのように組み合わせるかが、EUの新制度を実効性あるものにする上で重要となる。