富岳由来の技術を新たなAI向けCPUへ展開
富士通は9月14日、AIの計算処理を担う先端CPU「MONAKA」を11月から国内外で発売すると明らかにした。新製品にはスーパーコンピューター「富岳」を開発する過程で培った技術を取り入れている。
重点を置いたのは、学習済みのAIが質問や入力内容に応じて答えを導き出す「推論」の処理だ。富士通はMONAKAで演算速度と電力効率を高め、AI基盤に求められる処理を少ない設備で実行できる構成を打ち出す。富岳由来の技術を、AI向けCPUという別の製品領域へ展開する形となる。
推論処理の性能向上と電力削減を同時に実現
MONAKAの特徴として示されたのが、処理性能と省電力性能の両立だ。富士通の説明では、他社のCPUと比較して処理能力は2倍に達する。同じ処理量を実行するために必要なサーバー台数は半分で済み、使用する電力についても50%削減できるとしている。
単体のCPU性能だけではなく、サーバー全体の台数と電力使用量を減らせる点を含めて、AI推論向けの計算基盤としての効率性を前面に出す。処理能力を高めながら設備数を減らせるという設計は、MONAKAを搭載するサーバーの特徴にも直結する。
MONAKA搭載の国産サーバーも日欧で販売
富士通はCPUの供給に加え、MONAKAを組み込んだ国産サーバーも展開する。販売先として日本と欧州を予定しており、半導体とサーバーを一体で提供する体制を整える。
AIを巡る競争が世界的に強まる中、富士通は自社のCPUを核にしたサーバー製品を用意することで、計算基盤そのものを求める顧客にも対応する。MONAKAの性能をサーバー製品として提供し、国内外で利用の拡大につなげる考えだ。CPUだけを供給するのではなく、完成したサーバーとして販売することで、同社の技術を一体化した形で市場へ投入する。
地政学リスクを背景に欧州の基盤確保需要へ
欧州では地政学的なリスクを背景として、AIを支える技術や設備を米国と中国に過度に頼らず確保しようとする動きが強まっている。AI半導体を含む供給網は安全保障とも関係する重要な領域となっており、調達先の確保が重視されている。
富士通はこの動きに合わせ、日本発のCPUと国産サーバーを欧州へ投入する。性能面だけでなく供給体制も含めた製品展開によって、市場の需要に応える方針を示した。欧州をサーバーの販売地域に含めたことは、こうした安全保障上の関心を意識した展開となっている。
生産はTSMCが担いラピダス委託も選択肢
MONAKAの製造は台湾のTSMCに任せる予定となっている。一方で富士通は、将来の生産先として日本のラピダスに委託することも検討する。
11月の販売開始後は国内外でCPUを供給し、日本と欧州ではMONAKA搭載サーバーも扱う。富岳で培った技術、他社製CPUの2倍という処理能力、サーバー台数と消費電力を半減できる性能を柱に、富士通はAI推論向けの製品展開を本格化させる。製造面ではTSMCを活用しつつ、将来の国内委託先としてラピダスも検討対象に置く。