大企業の賃上げを業種別の数値から分析
経団連が8月4日に公表した2026年春闘の回答・妥結状況の最終集計では、大手企業の平均賃上げ率が5.37%となった。全体では3年連続の5%台を記録した一方、業種別にみると引き上げ幅には明確な違いが表れた。
今回の調査対象は、集計可能だった20業種146社で、従業員数は約84万5000人に上る。定期昇給とベースアップを含めて集計され、製造業と非製造業の双方で5%を超える賃金改善が実施された。各業界の人材需要や事業環境の違いが、それぞれの回答水準に反映された。
全体の平均引き上げ額は1万9752円で、前年より557円増えた。1976年に現在の集計方式となってから最も高い金額であり、業種を問わず賃上げに取り組む企業が増えたことを示している。
情報通信が8.28%で業種別の最高水準
非製造業の平均賃上げ率は5.38%となり、製造業の5.36%をわずかに上回った。なかでも情報通信は8.28%に達し、記事で示された業種のなかで最も高い伸び率となった。全体平均の5.37%と比べても、2.91ポイント高い。
情報通信分野では、高度な知識や専門的な技能を持つ人材の確保が企業活動を支える。今回の集計でも、人材の獲得と定着を重視した企業の対応が、高い賃上げ率として表れた。非製造業全体を押し上げる主要な業種となった。
建設の賃上げ率も6.76%となり、全体平均を大きく上回った。情報通信と建設はいずれも6%を超え、非製造業のなかでも高い賃金改善を実施した分野として示された。
製造業では印刷や金属関連が高い伸び
製造業全体の賃上げ率は5.36%だった。業種別では印刷が6.81%となり、製造業のなかで最も高い数値を記録した。非鉄・金属は6.45%、機械金属は6.04%となり、金属関連の複数業種でも6%台に達した。
これら3業種はいずれも製造業平均を上回り、賃金改善の動きをけん引した。製造業全体としては非製造業とほぼ同じ水準だったが、内部では業種ごとの回答に差がみられた。各企業の業績や人員確保の状況などが、引き上げ率の違いにつながった。
製造業と非製造業の平均値の差は小さく、双方で高い賃上げが行われた。ただし、情報通信の8.28%から機械金属の6.04%まで、全体平均を大幅に超えた分野が複数あり、重点的に待遇を改善する業種の存在も浮かび上がった。
人材の確保と定着へ待遇改善を加速
高い賃上げ率が続いた理由として、物価上昇への対応に加え、人材を確保して職場に定着させる必要性が挙げられた。人手不足が企業活動の制約となるなか、給与水準を改善し、働き手に選ばれる環境を整える動きが広がった。
企業が従業員への利益還元を強めたことも、高水準の回答を支えた。好調な業績を背景に、得られた利益を月例賃金の上昇という形で従業員に配分する企業が増えた。平均引き上げ額が過去最高となったことは、こうした還元規模の拡大を表している。
また、人材の能力向上や長期的な組織力の強化を目的とする「人への投資」も進められた。賃金を単なる経費として扱うのではなく、事業を継続し成長させるための投資と位置付ける動きが、各業種の春闘結果に反映された。
業種を超えて高水準の賃上げが継続
2026年春闘の最終集計によると、平均賃上げ率は前年の5.39%から5.37%へ小幅に下がった。一方、5%台は3年連続で維持し、平均引き上げ額は前年を超えて過去最高を更新した。賃上げの勢いが率と金額の双方で高い水準にあることが示された。
経団連は、賃金引き上げが一段と定着したとの見方を示している。情報通信や建設、印刷、金属関連などで全体平均を超える回答が相次ぎ、幅広い産業で待遇改善が進んだ。製造業と非製造業の平均もほぼ同水準となり、賃上げが一部の産業に偏っていないことが分かる。
一方で、個別業種の上昇率には開きがある。今回の結果は、全体として高い賃上げ水準を維持しながら、企業が置かれた人材市場や事業環境に応じて引き上げ幅を決めている実態を示すものとなった。