米国に生物学研究施設を開設し実験を伴う研究へ
米人工知能(AI)開発企業アンソロピックが、生物学に関する研究を進めるため、米サンフランシスコ・ベイエリアに実験施設を開設した。
同社の研究は、コンピューターによるシミュレーションだけでなく、実際の実験を伴う段階にも広がっている。ライフサイエンス部門の責任者は9月15日、施設を運営していることを認めた。
新たな設備の導入により、計算機を使った研究に加え、研究室内で実験作業を行う体制も整えられた。
アンソロピックはAI技術を医薬品開発に応用する取り組みを進めており、新たな研究体制もそうした事業活動の中で明らかになった。ただし、同社は研究所の目的を創薬だけに限定しているわけではないと説明している。
計算機による解析を超えた研究活動の範囲が判明
開設されたのは、生物学の実験を実際に行うウェットラボと呼ばれる施設だ。これまでのコンピューター上の解析やシミュレーションに加え、物理的な設備を使う研究活動へと取り組みの範囲を広げたことになる。
関係者の説明では、アンソロピックは希少疾患の治療法開発を目指しているという。ただし、研究対象となる疾患の名称や、治療法に関する研究がどの段階にあるかは公表されていない。
希少疾患に関する情報は関係者の説明に基づくもので、同社から疾患別の開発計画は明らかにされていない。
施設の存在は確認されたものの、そこで実施している実験の具体的な内容も公表されていない。研究所の開設によって、アンソロピックが実験設備を使った生物学研究に取り組んでいることが明らかになった。
ライフサイエンス領域を重視する開発方針を説明
ライフサイエンス部門を率いるエリック・カウデラー・アブラムス氏は、社会に利益をもたらす高性能なAIを開発するという企業の使命に触れた。
その中でもライフサイエンスには特に大きな可能性があり、同社の活動を進める原動力になっているとの考えを示した。
アンソロピックは医薬品開発の促進にも関心を示しており、AIを生物学分野で活用する取り組みを進めている。研究施設の開設は、ライフサイエンスを重要な技術応用先とする同社の方針に沿った動きだ。
一方、研究施設の具体的な運営内容について、同社が示した情報は限られている。施設を新設したことと、特定の治療法や医薬品の開発が完了したことは異なり、現段階の研究成果については詳細が明らかになっていない。
実験作業の自動化と業務時間の短縮を視野に開発
同社が注目する取り組みの1つが、AIを使った実験作業の自動化だ。
カウデラー・アブラムス氏によると、この分野での活用はまだ初期段階にあるが、多様な実験工程で作業時間を大幅に短縮できる可能性がある。
アンソロピックは、医薬品開発の促進や迅速化につながるようAIモデルの改善を進めるとともに、活用に伴うリスクを抑える方針も示している。
実験を自動化する技術については、効率だけを追求するのではなく、利用方法を慎重に検討しているという。技術開発とリスク管理を並行して進める姿勢が示されており、実験工程へのAI導入は初期の取り組みとして位置づけられている。
現時点で、時間短縮の実績を示す具体的な数値は明らかになっていない。
研究所の役割と未公表の開発内容を慎重に整理
研究施設の設立について、アンソロピックの広報担当者は、創薬だけを目的にした研究所ではないと説明した。それ以上の詳細には触れておらず、施設で実施する研究の全体像は公表されていない。
希少疾患の治療法を目指す動きが伝えられる一方、対象疾患や成果の進捗は不明なままだ。医薬品開発を加速するという目標に対して、研究施設がどの程度寄与するかを示す具体的なデータも明らかになっていない。
なお、同社は9月22日、別の医療情報企業との提携を通じて、中低所得国の医師にAIツールを無料で提供する計画も発表した。
生物学の実験を伴う研究と医療情報サービスへの技術提供は、同社がライフサイエンス領域で進める別々の取り組みとして示されている。